マウォポルスカ地方(マウォポルスキェ県, małopolskie)
旅行者のひとこと
ポーランドのかつての首都としてのプライドと伝統が町の中に残るクラクフは、世界遺産の歴史地区を持つマウォポルスカ地方の中心都市。
同じく世界遺産として知られるヴィエリチカとボフニァの王立岩塩坑、町全体でエルサレムのイエスの道行きを再現したカルヴァリア・ゼブジドフスカや
素朴さが心を打つ南部マウォポルスカの木造教会群もクラクフから日帰りができる場所にあります。
平原の多いポーランドの中でもこのあたりからは丘陵地が続きます。さらに南のタトリ山脈やピェニヌィ山脈などには2千メートル級の山々があり、ここまでくればホンモノの大自然が満喫できます。
この地方はポトハレと呼ばれ、遠くはルーマニアからスロヴァキアと国境の線を成す山岳地方の民が何世紀にもわたって培ってきた伝統文化を持つ地域です。
ポトハレには地域の「チーズ街道」があります。そのなかでも何よりも知られているのは、羊飼いたちが夏場に作るオスツィペクと呼ばれるチーズで、このグリル焼きにアカスグリのジャムをつけていただくと絶品。
マウォポルスカ地方の玄関口は、県都のクラクフで機能的な国際空港や鉄道駅、バスターミナルなどがあるヨーロッパ各地からのアクセスも便利な町。ポーランド屈指の人気都市で、旅行に来るなら必ず訪れたい都市です。
市内には中世から変わらないヨーロッパ屈指の規模を誇る広場や、歴史的建造物が続く見事な街並みに圧倒されます。数百年の時をタイムスリップしたような心地になることでしょう。
クラクフ歴史地区はユネスコが世界遺産登録制度を創設した年にヴィエリチカ岩塩坑とともに認定された、いわは世界遺産のなかの世界遺産。
歴史地区のシンボルである市場広場は、人々が行き交う場所、出会いの場、そして絶好の待ち合わせスポットになっています。
ここには織物会館、聖マリア教会、聖ヴォイチェフ教会、旧市庁舎塔があり、かつて富裕層が建てた豪華なファサードを持つ建築群が広場を囲みます。
たたずむと、ふと聞こえてくるラッパの音。これは毎時0分に聖マリア教会の上から鳴り響くヘイナウというメロディーで、ポーランドの正午をお知らせする時報にもなっています。
メロディーのいわれは、中世にタタール人がヨーロッパ方面へと進軍した時代にさかのぼります。
クラクフに近づくタタール人の存在をラッパのメロディーで住民たちに伝えたラッパ手が、敵の矢に射抜かれて絶命したという悲しい伝説に基づいています。
その英雄を象徴して音色は途中で止まり、またしばらくすると再び聞こえてきます。聖マリア教会にはドイツのヴィト・ストフォシュWit Stwosz作の豪華な聖壇(国宝)があり圧巻。
また、大学町であるクラクフには、中欧でプラハ大学に続く歴史を持つ1368年創立のヤギェウォ大学があり、ポーランド各界の有名人や歴史を遡ればコペルニクスや元ローマ法王で聖人のヨハネ・パウロ2世も学んだことで有名です。