1980年ユネスコ世界遺産に登録されたワルシャワ歴史地区は、例外的な世界遺産といえるでしょう。戦争によって灰燼に帰した町並みが完全な姿で再建され たとはいえ、再建であることに変わりはないからです。第二次世界大戦中に大破されたワルシャワの旧市街は、昔の絵画や町の破壊を予期して人々が描いた スケッチ、写真などをもとにして、レンガのひびに至るまで丹念に修復され、見事に中世の町並みは復活しました。ワルシャワ歴史地区が世界遺産に登録されたのは、建物自体の歴史的な価値というよりは、首都再建を願ったポーランド国民の情熱がユネスコによって高く評価されたからでした。
建築家や修復専門の技術 者の協力、そして戦後60余年という時間の流れのおかげで、今では歴史的建造物の本来あった部分と再建された部分のちがいはまったくわからなくなっていま す。
ワルシャワの地に人々が定住したのは10世紀頃のこと。13世紀末には、現在王宮のある辺りを中心として町が形成されました。1596年にはジグムント3世によって首都がクラクフからワルシャワに移され発展を遂げました。その後の時代も首都として、戦乱を乗り越えて政治・経済・文化・学問の中心地として栄えてきました。
ワルシャワの見どころ
旧市街(Stare Miasto)
旧市街にはひとつひとつに特徴がある石造りの建物ならび、旧王宮前の広 場は年間を通じて観光客でにぎわっています。 旧市街の小路へ入ってみましょう。古きよき時代の魅力あふれるワルシャワの雰囲気を感じることができます。旧市街の広場には間口の狭いかわいらしい石造りの建物が並びます。ストリートミュージックに客待ちの馬車、おしゃれなカフェで一休みする観光客。そんな光景がこの界隈の雰囲気に自然に溶け込んでいます。広場は規模としてはそれほど大きくありませんが、中世の趣をたたえた街並を堪能することができます。旧市街の北端には15~16世紀に作られたバロック様式の砦「バルバカン」(Barbakan)があります。その先は新市街と呼ばれ、バルバカンから北に延びるフレタ通り16番地(ul.Freta16)にはキュリー夫人の生家である建物の中にキュリー博物館Muzeum Marii Skłodowskiej Curieがあります。
王宮(Zamek Królewski)
旧市街の入り口右手の堂々とした建物が王宮です。この王宮も1939年に空襲を受けた後、1944年にはドイツ軍に完全に破壊されてしまいました。その後、ポーランド民族の象徴ともなっていた王宮は共産政権下なかなか再建を許されず、修復が決まったのはようやく1971年になってからのことでした。しかしその後、多くの人々の尽力により、王宮は外装から内装まで全て昔のままに再現されました。絢爛豪華なヨーロッパの名匠たちの作品で飾られた室内装飾や国宝級の美術品には目を奪われます。
【見学】
・4月まで
火曜日〜土曜日 10:00-16:00
日曜日11:00-16:00(日曜日は入館無料) 月曜日休館 (3月22日、23日は復活祭のために休館)
3月24日11:00-16:00
・5月から9月まで
火曜日〜土曜日 10:00-18:00 日曜日11:00-18:00
5〜6月の月11:00-1800
7〜9月の月11:00-16:00(7〜9月の月曜日のみ入館無料)入館は閉館の1時間前までです。
クラクフ郊外通り( Krakowskie Przedmieście)
ワルシャワ王宮前広場から南に延びているのがクラクフ 郊外通りです。この通りをさらに南下すると新世界通り(ノヴィ・シフィアト Nowy Świat)を経てワジェンキ公園まで抜けることが出来ます。この目抜き通りは、かつての「王の道」であり、左右には大統領官邸やワルシャワ大学のメインキャンパスなど、ワルシャワを代表する施設が点在します。現在ではワルシャワの銀座として親しまれ、ワルシャワっ子にも観光客にも人気のカフェやサロンが多数店を構えます。
ショパンの足跡をたどって
ワルシャワ出身の有名人といえば、何と言ってもピアノの詩人ショパンです。ショパンが生まれたのは1810年、ワルシャワ郊外の村ジェラゾヴァ・ヴォラ(Żelazowa Wola)ですが、少年期から、国を後にすることになる二十歳の年まで一家はワルシャワに住んでいました。現在もワルシャワにはショパンゆかりの場が残っています。クラクフ郊外通りにはショパンの心臓がまつられている聖十字架教会(Kościół św. krzyża)や彼がオルガン奏者を務めたヴィジトキ教会、ショパン家のサロンなどがあります。通りの名が新世界通りに変るところでヴィスワ川方面に左折すると間もなくショパン博物館が見えます。
新世界通り、ウヤズドフスキェ通りを経て左手に見えてくるのはワジェンキ公園(Park Łazienkowski)です。首都にある公園としてはヨーロッパ最大のもので、園内にはワジェンキ宮殿(Pałac Łazieńkowski)、またの名を「水上宮殿」(Pałac na Wodzie)というスタニスワフ・ポニャトフスキ王の夏の離宮があります。気のおもむくままに散策すれば柳の下にたたずむショパン像を目にすることができます。この像の下で行われる野外ピアノコンサートは5月から9月末まで毎週日曜 日に開かれています。
さらにもう少し足をのばせば、「王の道」の終点にヤン3世ソビェスキ王が17世紀に建てたバロック様式のヴィラヌフ宮殿(Pałac w Wilanowie)があり、豪華な調度品や装飾にはすっかり目を奪われてしまいます。宮殿の中だけでなく、見事なフランス庭園もお見逃しなく。